あまりにも長い時間小説を書くことに集中していると、
幻覚を見るようになる。
そうなる頃には、
自分がどんな物語を書いているのかも忘れ、
無意識の中で手が動くようになっている。
やがて髪の毛の隙間を掻き分けるようにして、
米粒ぐらいの大きさや、
ピーナッツぐらいの大きさの文字が、
頭の中からわらわらと湧き出してきて、
首筋を伝って腕を渡り、
指に乗っかってペンの周りに集まって、
我先にと押し合い圧し合いしながら僕の手の上で列を作る。
列の先頭にいる文字は、
ボールペンの切っ先でぴょこぴょこと踊り、
僕が紙にペンを走らせると、
すうっとインクと混ざって紙の上に定着する。
そうやって、
一文字ずつ列は消化されてゆき、
僕の手元にはひとつの小説が残る。
僕自身は、大して何も考えていないのだ。
そんな風にして出来上がる小説も、
たまにはあるんですよ。
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