私はあの目に囚われてしまったのです。
あの日、たまたま一人でバーで飲んでいた私を、あの男
は言葉巧みに誘い、酔っていた私を半ば強引にホテル
へと連れ込んだようなのです。
男は私の体を操りながら、片時もその視線を私の目から
離すことはありませんでした。
彼は私の目を見るだけで、私がどのような仕事をしてい
るか、これまでどのように努力して今日に至る地位を築き
上げて来たか、という事を理解したようでした。それどころ
か、毎日毎日スケベったらしい上司の視線にさらされて
嫌な思いをしているというような事も言い当てました。
そうやって彼は私の体を開き、同時に内面をも暴き出し
ていったのです。そして、そうしながらもずっと私の目は
捉えられたままなのでした。
正直に言ってそれは快感でもありました。私が内面的に
抱えていた悩みや苦しみを、打ち明ける事も無く理解して
もらえる事に密やかな喜びと安堵を感じたのです。
しかし、それ以上に私は許せなかった。
これまで私が苦労して、試行錯誤を繰り返しながらも洗練
を重ねて磨き上げてきた私という存在、そのプライドを、
その男は、その目だけで粉々に砕き、私を一人の女に
戻してしまった。私はそれを認めることなど出来はしない。
あの男は今もこの街のどこかにいて、無力な女をまた一人
生み出しているに違いない。そう思うと居ても立っても居られ
ないのです。
私は、あの男を捜しています。
特徴は、目です。
お心当たりのある方は、どうかご連絡を…
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