狂おしい程の空白が頭の中にある。
誰も話す相手がいない夜。考えても考えても答えの出ない問題。待てど暮らせど辿り着かない約束の手紙。どんなにもがいても見つからない最初の一文。
僕は空白を見つめ、そこで泳ぎ、溺れ、沈みつつ、水面を見上げる。
浮かばない言葉。辿り着かない場所。
そこに太陽はない。生命もない。宇宙が誕生する前の泥の中だ。
僕は茫漠として広がる智の深淵の前に立ち、形がなされる前のあらゆる存在が、混じり合い、流れ、触れたかと思えばするりと抜けて行く、とりとめのない緩慢な変化の姿を眺める。
それは発露の場だ。
手を伸ばし、僕は何かを掴もうとする。
掴んだかと思えば次の瞬間には手の中で溶解し、元の形のない何かに変わる。残るのは手に何かが触れた、という感触だけだ。それも一晩寝てしまえば綺麗さっぱり無くなってしまう。
掴んでも掴んでもすり抜けて行く作業の連続。
いっその事、空白の中に身を投げてしまいたくなる。そして自ら形のない何かとして生き、同じように空白の前でもがく様々な人間の手の中をすり抜けて行くのだ…
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