2007年11月7日水曜日

一発の銃弾

 人は人生に対峙するとき、常に一人である。
 僕が自分の胸を貫こうとする弾丸を見た時、全ての時は止まり、背中にいる人の事やその銃を撃った人の事、そして僕らが存在していたその場所にあったあらゆる物事は、映画のスクリーンを飛び越えて観客席の向こうへと飛んでいったように感じられた。
 僕の人生は、僕と、その弾丸の関係に集約されてしまったのだ。
 僕はそれまで、僕の人生を呪い、他人を呪い、僕自身を呪っていた。
 僕は弾丸に向かって話しかける。
「お前が僕の待っていたものなのか?」
 弾丸は答える。
「その答えは君にしか分からないだろう?」
 いつもこうだ。問いかけると、更なる問いが返ってくる。明確な答えなど何処にもなく、疑問に呼応する疑問が次々と派生的に増殖していくだけだ。際限のないループ。同じ事の繰り返し。それは、人生そのものと変わりがないのじゃないか? だとすれば、永遠に問いかけ、問いかけられる事が人生なのだろうか。
 どんなに考えても答えは見つからない。僕は明確な答えを求めていた。僕の頭を嵐の後の空気のようにすっきりと清々しい気持ちにさせてくれる最後の答えを。
 だが、その苦悩ももう終わる。
 一発の銃弾が、僕を救う。

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