ハートの音が聞こえる。
ぼくはそれを無視できない。
あの見慣れたマークが、確かに僕の胸にある。
それが脈打っている。
歌っている。
叫んでいる。
そして僕に主張する。
「俺を閉じ込めるな!俺を解放しろ!」
僕は思う。
(まあ、冷静になれ)
ハートは反発する。
「俺の辞書にそんな言葉はないんだ。止まってる場合じゃないんだ!」
ハートが高鳴る。
激しいリズムでむちゃくちゃなドラムを叩く。
「止めるんじゃねえ!止めるんじゃねえ!」
僕はその勢いに動揺する。
ちょっと待て、考えさせてくれ。
「ふざけるな。お前は俺に洗脳されてればいいんだ!」
ハートの叫びはどんどん強烈になっていく。
彼がひとたび音を鳴らすと、僕の体は全身が強く揺さぶられる。
「お前は俺の奴隷なんだ。下僕なんだ。何も考えるな。俺に従え!」
僕は次第に圧倒される。
ハートに従うのが当たり前なのかも知れない、と思い始める。
苛烈な叫び。
繰り返される動悸。
波動の振幅が激しく上下に運動を始める。
胸が痛む。
息苦しくなる。
考える事が出来なくなる。
もういいんだ。
楽になれ。
僕はハートとひとつになる。
0 件のコメント:
コメントを投稿