2007年11月13日火曜日

ハートビート

 ハートの音が聞こえる。
 ぼくはそれを無視できない。
 あの見慣れたマークが、確かに僕の胸にある。
 それが脈打っている。
 歌っている。
 叫んでいる。

 そして僕に主張する。
「俺を閉じ込めるな!俺を解放しろ!」
 僕は思う。
(まあ、冷静になれ)
 ハートは反発する。
「俺の辞書にそんな言葉はないんだ。止まってる場合じゃないんだ!」
 ハートが高鳴る。
 激しいリズムでむちゃくちゃなドラムを叩く。
「止めるんじゃねえ!止めるんじゃねえ!」
 僕はその勢いに動揺する。
 ちょっと待て、考えさせてくれ。
「ふざけるな。お前は俺に洗脳されてればいいんだ!」
 ハートの叫びはどんどん強烈になっていく。
 彼がひとたび音を鳴らすと、僕の体は全身が強く揺さぶられる。
「お前は俺の奴隷なんだ。下僕なんだ。何も考えるな。俺に従え!」
 僕は次第に圧倒される。
 ハートに従うのが当たり前なのかも知れない、と思い始める。
 苛烈な叫び。
 繰り返される動悸。
 波動の振幅が激しく上下に運動を始める。
 胸が痛む。
 息苦しくなる。
 考える事が出来なくなる。

 もういいんだ。
 楽になれ。
 僕はハートとひとつになる。

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