真っ白な空間。
卵形のドームのように偏って緩やかに丸みを帯びた天井。
その下に広がる回廊は
百人ぐらいが横一列にならんでも余裕が持てる程幅広く、奥深い。
床には
回廊の奥に向かって二つの平行した道を描くように正方形のタイルが並べられ
その他の面をそれよりも小さい大きさのタイルが
一見不規則とも思える幾何学模様を描き出している。
空間の中は一本の柱も存在しない。
全体を見渡してみると
不思議とグレーな色合いに染められているような気がするが
ほとんどが白を基調にして設計されているはずだ。
回廊の両端は、片側は光沢のある壁になっていて
その反対側は無職透明なガラスの窓になっている。
そこから見える風景の中にはこの国で最大の規模を誇る
空港の発着場が見えている。
人通りはあまり無い。
僕は回廊の真ん中辺りでガラス窓の手すりに肘をつき
反対側の壁に埋め込まれた自販機で買った
甘いミルクコーヒーをすすりながら
飛行機が到着するのを待っていた。
窓の向こうに空港が見える。
この都市はまだ建設中で住民も少ないが
壮大な移民計画が進められていて
やがては賑やかになるはずである。
必要な施設と巨大な建造物から
優先的に造られて行くので
ただ広いだけという空間が
あちこちに生まれている。
僕はまだ迷っていた。
後数分で降りてくる乗客の一人を
迎えに行くべきか
ここで引き返すか
それは彼女から僕に与えられた選択肢でもある。
答えは簡単なはずだった。
ただ、彼女に付帯する過去と言う属性に
なぜか足を引っ張られる思いがして
僕は足を止めた。
何もかもを新しく始めたこの場所で
果たして過去が必要だろうか?
僕は答えのつかないまま
また一機
この星へ降り立つのを眺めていた。
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