2007年10月7日日曜日

空想都市2

客席の一番窓際に座っているわたしの位置からは
これから降りる空港の姿が正面に見渡せる。
もう少し旋回をすれば
やがて機体の進行方向に
滑走路が見えてくるのだろう。

もうすぐ日が落ちる。
太陽が地平線の彼方に身を隠し、
客室内を真横から打ち抜いていた光が
ふっ、と瞬間的な減衰を見せる。
それはとても美しい人生の一瞬として
つかの間に
わたしの記憶に残る。
でもそう長くは続かない。
次から次に時は訪れ
わたしは美しさから引き剥がされる。

だから
時間に負けたくなくて
他の事を投げ打って
頑張ってきた。
あの人の事も。

なぜ急に彼の事を思い出したのか
その理由はよくわからない。
新しく生まれようとしている都市で
彼が働いている事は
旅立つ直前に彼に電話するまで知らなかった。
思わぬ巡り合わせに驚いてしまった事と
登場時間に追われて
慌ててしまって
迎えに来てなんて言ってしまったけど
彼は来てくれるだろうか。
迷惑ではなかっただろうか。
彼も仕事で来ていると言っていたし
邪魔になってしまったのではないだろうか。

何年も忘れていたのに
なぜこんなに突然気になっているのだろう。
ひょっとしてわたしは
まだ彼の事を愛しているのだろうか。

気持ちに何の整理もつかないまま
わたしの乗った便は
着陸態勢に入った。

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